●ステラポラリス

スカンジナビアが沈没してしまった。ほんの1ヶ月前に見たばかりの北欧の貴婦人と呼ばれていたあの姿はもう見えない。
伊豆へ行くときは熱海側は極力通らないで、沼津側を通りました。(船や海の好きな人に取っては大事な文化遺産です。)
スカンジナビア(ステラポラリス)にはそれだけの価値がありました。ちょっと前に「船の上のピアニスト」と言う映画を見てピアノがある場所はよく似ていてまたこの船を思い出しました。
ステラポラリスはノルウェーの船会社ベルゲンライン(B.D.S.)のシンメルと言う人が「船を1隻、作ってほしい。それもうんと豪華な船を、オスローの連中が我が目を疑うような、海に浮かぶ『シャトー』を。つまり、西ノルウェーの自慢、ベルゲン市民の誇りになる船を、すばらしい旅が出来る船を。」と言って
1926年11月9日に進水した船です。何がすごいかと言うときれいです。美しいです。人間が作った物の中でもっとも美しい物の一つです。
排水量5100トンでたった200人しかお客さんは乗せません。(普通の三分の一)
船内も豪華でガラスにも細かい絵が刻まれ、いくつもの物語が作られています。手すりや壁は飴色に塗られ、深紅の絨毯はふかふか、船具の真鍮は磨かれ、金色に光っています。身長より大きな2連のラット(舵輪)、ぴかぴかの点鐘、色々な人のドラマを見てきたと思います。第二次世界大戦ではUボートの士官の宿泊所だったそうです。経済効率を考えたらこんな船は作れません。文化や美は経済効率と相反するものです。
クリッパー、バウ(船首のとがった形)とカウンタースターン、すべてシェイプは何とも言えないきれいな物です。
文化遺産とか国宝とかと同等、それ以上の価値があると思います。歴史そのものです。
35年前に日本に来てフローティングホテルとなり、いろいろな人がこの船に滞在したと思います。明治時代の文化人も良くここに泊まったそうです。
船は鉄板を何層もボルトで留めてあると聞いてました。当時は溶接はしていないと聞いてました。そんな35年も経った船を香港まで曳航するのは無理があったと思います。
大学時代はこの船のある駿河湾で過ごしました。いつもきれいなこの姿を横目で見て、ある時は海を、ある時は陸を。
経費を浮かせるために浸水するのを解っていて修理のため香港へ曳航すると言って故意に沈めたなら許しません。